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女性建築士のブログ 普段どおりの毎日

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見学会という出会い

ワタシは独立して仕事を始めてから、家が完成すると、見学会を開催させていただいてきた。

最初はお客様も、「ん~どうしようかな~」とあまり乗り気でない方もいらっしゃったが、家ができあがる頃には、なぜか皆様、「いいよ~」と言ってくれた。

それは、ワタシがお仕事をがんばってやったことに対しての感謝の気持ちもあっただろうが、それにもましてインターネットが普及していなかった時代で、小さな設計事務所が、唯一の営業手段として見学会をやることの意義を、みなさん理解してくれたということだった。

10年前にはもちろんオリジナルのHPももちろんなかった。
設計事務所が見学会を行うことも少なかった。

最近では、インターネットからのアクセスも増えたが、それでも、昔ながらの見学会はとても意義のあることだと思っている。
なによりも、じかにお客様とお話できる限られた機会だからである。

そこに来場した方に契約してもらうということよりも、ワタシ自身が勉強になることのほうが多い。
業界に長くいると、住宅において何が必要で何がいらないのかという、フツウの感覚が失われていくこともあるからだ。

住宅は人が暮らして、はじめてそれが生かされる。
展示場と住宅の違いはそこにある。
大きな住宅展示場をたずねて、素敵なのだが、何か空虚な感じがする原因はまさにそこなのである。

住まう方がこう思って、このように造った というのを聞くのは、お客様にとってはなによりも知恵となる。
私たちだったら、こうするのに とか思うことも実は大切なことなのである。

価値観が多様化し、お好み弁当のように、これでもかと贅の限りをつくした展示場はあまり参考にならないという考え方も浸透した。
展示場は夢を売る場所ではなくなったのかもしれない。
時代は変化するからそれは、いたしかたのないことである。

今回の「終の棲家  老後に暮らす平屋建」は 1000万円でつくってほしいという要望があった。
だから、贅沢なつくりではないし、広くもない。
既製品をなるべく使い、コストもおさえた。

それでも、お客様が不便なく使えるように設計したし、お店を営んでいた頃の郷愁を大事にし、道路から、近隣の昔馴染みの友達が簡単に入ってこれるようにした。
唯一の贅沢品ともいえる、堀座卓をつけた。

小さければ光熱費も抑えられるし、家のなかを歩く距離も少ない。
維持費も少なくてすむ。

外構工事やらエアコン、カーテン工事を入れれば、希望の1000万円からは少しオーバーしたが、なんとか完成した。

今までで一番小さな家だが、一番心温まる家である。

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by asaasa-archi | 2010-12-16 22:37 | お仕事