久々に見ごたえのある映画だった。
女医と喘息患者の闘病と死に対する前向きな姿勢と葛藤を掘り下げた、真摯な出来になっていた。
2時間半もある長い映画だったが、ふたりの心の動きを克明に描き、地味ながらも、尊厳死問題を提起していた。
医師という大変な職業に従事する40代半ばの女性の孤独をからめあわせ、女の生き方にも触れながら、病気に立ち向かう日常を粛々と綴っている真面目さに好感が持てた。
高い学歴で手に入れた最高の職業は、高い賃金と引き換えに人の死を常に間近に見ながら精神をすり減らすことを余儀なくされる。
結婚出産という女性として最も憧れるものを捨て、一生を医療にささげる選択をした彼女の一途な心が、重篤な患者の人工呼吸器をはずすという行為におよんでしまう。
長い間のその患者との親交と、彼の家族への配慮が行き過ぎたかもしれない行為へと発展するのだ。
尊厳死か否か を観客に問う映画なのだ。
彼女の心に焦点をあわせ描かれているので、十分な同情を寄せる気持ちにはなるが、はたして人の死の時期を神以外が決めていいのか という疑問も抱く。
キリスト教では、本人さえも死の時期を決めてはいけないとされているくらいであるから、一介の医師にその権限はないのではないだろうか。
他人事であるので、こうも冷静な意見を言うことができるが、はたしてこの患者が自分の愛する父や母だったらどうなのか と考えるとき、死の間際に苦しむ父母を一刻も早くその苦しみから解放したいと、望むのであろうか・・・
わからない。
観た後に、こうもグルグルと思考を繰り広げる映画は、本当に久しぶりだ。
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zzz