NGOで脱北者支援活動をしている野口孝行さんの著書
「脱北 逃避行」にこのような一節がある。
中国人の知り合いから脱北してきた3人の女性を中国から日本に脱出させてほしいとの要請があり、彼が潜伏先の中国で彼女たちに会うくだりである。
3人の女性は金姉妹と朴順姫といった。
「金姉妹と朴順姫の間には決定的な違いがあった。それは北朝鮮公民である金姉妹に対し、順姫は日本国籍を有する資格のある者であるという違いだった。日本出身の金姉妹だが、二人の両親は在日朝鮮人だった。そのため四十数年前に北朝鮮に渡った時点で二人の国籍は事実上北朝鮮になった。一方北朝鮮で生まれ育った順姫だったが、母親とともに60年代に北朝鮮に渡った父親が日本人であった。日本を見たこともなくさらには日本語もおぼつかない順姫ではあったが、法律上日本人と規定される存在なのだ。
この差はとてつもなく大きかった。日本にいる順姫の家族は外務省に働きかけ「邦人保護」という名目で順姫を日本に渡航させるように調整していた。」
海外旅行に行って、なにかの事故でパスポートを紛失すると、もう事実上身動きできない状態に陥り、とにもかくにも、パスポートの再発行が最優先の行為となる。が、日本国内でフツウに暮らしていれば、ほとんど「国籍」というものを実感することはない。
それでも、例外がある。
オリンピックや今開催中のFIFAワールドカップなどをTVで応援しているときだ。
仕事で海外から日本にきている人たちなどは、自国民同士で集まり、自国の応援にいとまがないだろう。
試合のあと、渋谷でバカ騒ぎしている若者たちの気持ちの底には、きっと普段実感することのないナショナリティーが湧き上がってきているからなのかもしれない。
闘莉王選手は16歳で日本に来るまでは日本語もほとんど話せなかったブラジル人だが、帰化し日本人として、ワールドカップで活躍している。(民族的には半分日本人の血である)
その反対に、日本で生まれ育った韓国籍の鄭大世は北朝鮮チームで戦っている。
生まれ育つ場所と民族的な血と国籍というものは、眼に見えぬうちに人に呪縛やら反発やらの感情を潜ませて、価値観やら人生といったものに深くかかわり、または解けぬ縄のように絡り、時として不可思議な現象をおこしたりする。
それは、日本人として日本で育ったものには決してわかることのない深海のようなものであろう・・・
プチリフォーム日記 更新中です。